ロンドンマラソン2023は優勝した3人が驚異的だった
昨日は、ロンドンマラソン2023をネットで観戦しました。
レベルが高すぎて自分のランニングの参考にはなりにくいのは承知しているのですが(苦笑)、やっぱり世界トップの走りがどんなものなのかは見ておきたいので。
先日個人的な注目ポイントを書いたのですが、それを上回る驚異的なものを見てしまい、大満足でした。
特に各部門で優勝した3人がヤバかったです。
マルセル・フグ
男子車いすマラソンで優勝したのは、スイスのマルセル・フグでした。
(「フグ」は故アンディ・フグと同じ苗字の「Hug」)
この選手、車いすマラソンでは絶対王者のような存在。
東京マラソン2023で連覇していたので名前を知っていたのですが、驚いたのは
先週ボストンマラソンの時にも優勝していて、
1週間後のロンドンマラソンでも優勝したこと!
です。
1週間でリカバリーも移動もして、それで連勝するなんて…(汗)。
時差もあったはず。
この2か月でWMM(ワールド・マラソン・メジャーズ)3連勝というとんでもない勝ちっぷり。
もちろん車いすマラソンの競技人口はマラソンに比べれば少ないでしょうし、競技レベルもマラソンほどではないかもしれません。
でも、実力が突き抜けすぎていて本当にすごいです。日頃から相当なトレーニングを積んでいるのでしょう。
1位でフィニッシュした時に名前を見て、思わず「え?また!?」と言ってしまいました(苦笑)。
シファン・ハッサン
女子マラソンは、オランダのシファン・ハッサンが優勝しました。
トラックレースではすでに有名で、東京オリンピック2020では1500m走予選の時に他の選手と接触して転倒したにもかかわらず、すぐに立ち上がって走り出し、結局1位でフィニッシュするという離れ業をやっているので、「あぁ、あの選手か」と思い出す人もいるかと。
今回がマラソンデビューでした。
どうなるかなぁと戦前ちょっとだけ注目していました。
ただ、周りのランナーが実力者揃いだったので、2時間20分前後で上位フィニッシュできれば上等だろう、ぐらいに思っていました。
レースでは14~15kmぐらい(?)で苦痛に表情をゆがめながら2度立ち止まって左のハムストリングスを気にしたり、ストレッチをしたりしていました。
当然先頭集団は前をそのまま前を走りつづけています。置き去りにされていました。
これを見た時点で、
「あぁ、これは途中リタイアかな?それか経験のために、ゆっくりでも完走するのかな?」
ぐらいに思っていました。
が、レース後半になってペースメーカーが離脱したあたりに、ハッサンがいるのに気づきました。
びっくりです(笑)。
決して表情には余裕がなさそうなのですが、そのままずっと先頭集団にくっつき、終盤に3人になった時もハッサンがいて、さらにびっくり。
で、バッキンガム宮殿前を通った後のラストの直線で、トラックレースのような強烈なラストスパート。
1500m走のラスト100mを見ているような走りでした。
当然他の選手はついていけず、1位でフィニッシュ!
タイムは2:18:33。
日本記録より約40秒速い…(汗)。
途中から雨が降りだし、決して良好とは言えないコンディションだったにもかかわらず、このタイムで優勝。
びっくりです。
去年、初マラソンでいきなり2:16:49で走ったレテセンベト・ギデイもそうですが、トラックレースのトップがマラソンに転向していきなりこんなに強いと、日本の女子マラソン界は一層厳しいなと思いました。
ケルヴィン・キプトゥム(キプタム?)
男子マラソンで優勝したのは、ケニアのケルヴィン・キプトゥムでした。
(※「KIPTUM」を「キプタム」と表記する日本メディアが多いですが、英語の実況で「キプトゥム」と言っているように聞こえたので、ここでは暫定で「キプトゥム」と表記します)
タイムは2:01:25。世界歴代2位!
驚きなのは、まずキプトゥムが2度目のマラソンであることです(!)。
初マラソン(バレンシアマラソン2022)で2:01:53だった時も驚きでしたが、ある種のビギナーズラックというか「勢いのまま走ったら走れちゃった」的な感じなのかなと思っていました。
それがそれが。
連続で2時間1分台、しかも前回を上回る記録を出すというのは、間違いなく実力は本物です。
さらに驚いたのは、レース後半の走りっぷりでした。
30kmぐらいまでペースメーカーが引っ張っていたのですが、ハーフを過ぎたあたりでキプトゥムはペースメーカーと
キプトゥム「おい、ちょっとペース遅くないか?」
ペースメーカー「そんなことないよ!こっちは設定されたペースで走りつづけているよ!」
みたいなやりとりをしていました(セリフは私の勝手な推測(笑))。
前半のハーフを1:01:40だったので遅いなぁと感じていたようでした。
30kmあたりでペースメーカーが離脱すると、一気に前に出ました。
その走りっぷりが凄まじかったです。
ラスト2~3kmのスパートのような感じで走っていたので、
「おいおい、タイミング早くないか?」
と思っていたのですが、結果的にそのままの速さで残り12kmを走っていました(汗)。
しかも、ラストの直線ではダッシュまで!(爆汗)
2時間1分台、なんなら世界記録を狙っていたのかもしれません。
30km過ぎからの単独走では終始ハーフマラソンのような速さでした。
実際、後半のハーフは59:45。
ハーフマラソン日本記録を上回っています(汗)。
しかもキプトゥム、まだ23歳だそうで…(汗)。
同じく2時間1分台ランナーのキプチョゲとケネニサが30代後半であることを考えると、末恐ろしいです。
いや、近い将来キプチョゲを上回る記録を出しそうな気がしています。
人類初のマラソン公認2時間切りは、キプトゥムが筆頭候補だと思いました。
今はキプチョゲこそが“GOAT”だと思っていますが、いずれ“GOAT”の座が代わるかもしれません。
日本人選手には「控えめな期待」を
昨日のロンドンマラソンを見て、男子も女子も(そして車いすも)世界との差が広がっているなと感じました。
距離にして1km以上の差。
詰めていくにも相当な時間が必要かと。
もちろん国内のトップレースも面白いし、今後も見続けるけれど、オリンピックや世界陸上で「何としてもメダルを!」とか「メダル狙えるぞ!」みたいな過剰な期待は禁物だなと思いました。
メダルを獲る可能性はゼロではないでしょうけど、現実問題としてかなり厳しいぞということです。
なので誰が代表選手であっても、期待は控えめにした方がいいなと思いました。
いや~、すごかった。
追記
キプトゥムとともに注目していたケネニサは途中でリタイアしていました。
(リタイアしていたことに気づかなかった…)
もう一人注目していたモハメド・ファラーは、レース前半で第2集団につき、そのまま上位に絡むことなく2:10:28で9位フィニッシュ。
最後のマラソンだと思いますが、粘り強く走り抜いていました。