MMAの名レフェリーと言えば”ビッグ”・ジョン・マッカーシーさんしかいない!
MMAで最も有名なレフェリーといえば、”ビッグ”・ジョン・マッカーシーさんだと思っていますが、そのマッカーシーさんが日本でMMAのレフェリー向けの講演会をしたという記事がありました。
(記事はこちらです)
「ふ~ん」という感じで読んでみたのですが、書いている(マッカーシーさんの言葉の)内容がとても素晴らしく、自分がどこかで何かの審判をやる時にも(やるのか?(^^))参考にしたいと思い、備忘のために書いておくことにしました。
何らかの競技で審判をやっているすべての人が知っておいてよい内容だと思います。
金言の数々
このセミナーに参加したわけではなく、レポート記事を読んだだけなのですが(苦笑)、個人的に
「そう!そうだよ!その通り!」
とか、
「なるほど~。だから、あの試合で……」
と思うような言葉があり、審判の鑑とも言える人だと感じました。
金言がいくつもありました。
「仕事は選手を守ることです。選手のために正しいことをしましょう。ファンをハッピーにするためではありません。選手への思いやりと彼らが経験していることへの思いやりをもつことが審判にとって重要です」
その通りだと思います。
審判は、「ファンのため」「観客のため」である必要はないし、それは違うと思います。
「どこが極まっているのか、正しい知識を持つことで初めて正しいレフェリングが可能となります」
「チョークと名付けられた技ひとつをとっても様々な種類があり、どのように技が入り、どこの部位に効いているのかを理解する必要があります」
ほんとにそう思います。
MMAでもボクシングでも柔道でも柔術でも、選手のどこに効いているかの見究めは、正しいレフェリングをする(ストップのタイミングを見極める)うえで重要なことでしょう。
柔道や柔術は、競技の熟練者がレフェリーをすることが多いので相当理解されているように思いますが、MMAでは関節技や絞め技が進化しつづけているので、これは大事だと感じます。
「レフェリングで大事なことは“常に両選手に対して平等であること”です。そして優先すべきは、ルールを優先するのではなく“選手の安全が第一”です」
はっきり断言していて、かつ、実際にそういうレフェリングをしているので、言葉に重みがあります。
マッカーシーさんは、本当にレフェリングがフェアです。ストップする時は躊躇なくカラダを張ってストップさせるし、判断に迷いがないと感じます。止められた選手が文句を言ってきても、ちゃんと理解できるように説明しているし、さすがだと感じます。
「反則を犯した選手にインターバル中にセコンドと喋らせてはいけません。一方が反則の攻撃に苦しんでいる最中に、反則を犯した側が呼吸を整えてセコンドからの指示を得ているようなことがあってはなりません。ニュートラルコーナーで待たせるのはそのためです。あくまでも選手が“平等に再開”できること。常にどう判断すれば公平な結果になるか考えてください」
「そうだったんだなぁ。たしかにその通りだなぁ」と感じました。
レフェリーは試合を一旦ストップさせて、反則された選手のケアをするのが通常だけれど、反則をした選手の方までちゃんと注意を払っているレフェリーは少ないのでは?
「故意の反則によって、明かなダメージを受けた場合は、減点2点でもよいと思います。どの選手も『わざとじゃない』と言います。でも、自分の子供も私に嘘をつきます。『わざとじゃない』と(笑)」
反則した選手の「わざとじゃない」はあるあるでしょう。
自分もサッカーとかで言ったことがあります(笑)。
でも、明らかに故意だと判断したら、毅然とした態度で然るべきペナルティを与えてよいのだなと(当然選手に説明する必要はあるでしょうけど)。
相応の反則であれば、サッカーでも躊躇なく一発レッドを出すのは大いにアリだと感じます。
「試合でのドクターは、医療従事者としての意見を言うことが多いです。格闘技の試合は怪我をすることが前提の場所です。日常生活で起こる怪我とは性質が異なる部分もあります。リングサイドフィジシャン(医師の監督下で手術や薬剤の処方などの医療行為を行う専門職)は選手の安全のため、怪我をしながらも続けられるかどうかを見ています。将来的に問題が出そうな選手に試合を続けさせたりはしない。レフェリーは、一緒に仕事をするドクターのことはよく知っているべきです。試合前にドクターと話をしてください。レフェリーとしてドクターと信頼関係を持つことができれば、この競技についてよく知っているレフェリーに最終的な判断を委ねられることもあります」
「明らかな負け試合で負傷している選手がいたとします。我々はその選手の絶対に諦めない心を理解しています。でも判定まで行って勝つ見込みはあるか? 一方的な展開になってなぶり殺しにされる場合もあります。そんなときに“本当にその選手のためになっているのか”を考えてください。自分があるドクターをそっとつねったら止めてもらったこともあります。ドクターの意見を覆すことは勧めませんが、信頼関係があれば、こちらの意見を聞いてくれるでしょう。だから、オフィシャルは試合後たくさんの意見交換をしましょう」
MMAに限らず、すべての競技のレフェリーに言えることかと。
どんな競技でもケガとは隣り合わせで、会場にはドクターがいるものです。でも、競技におけるダメージやケガは、マッカーシーさんの言うとおり日常生活のものとは性質が違うから、安全のためにも審判側とドクターとの相互理解は大事なことだと感じます。
アマチュア競技でどこまでやるのかというのは考えものではありますが、少なくとも↑のマッカーシーさんの言葉は知っておいた方がいいなと思います。
「会場で選手や関係者と話すか? ファンが贔屓していると見えたとしたら、おそらくそれが本当です。私のジムには、外の人から見える関係者の写真は1枚だけです。プロになる前のティト・オーティズとの2ショット写真だけ飾っています。オフィシャルとは何かを常に心がけてください。会場で自分から選手に関わってはいけません。第三者から見えたことは事実になりますから。選手から一緒に撮影を頼まれることはあります。自分から選手に撮影を頼むことは、オフィシャルとしては慎むべきことです」
「リングサイドでプロモーターと話すことはあるか? ありません。誰のために働いていますか? 審判機構の一員として仕事を受けているのですよね。あなたはプロモーターのために働いているのではありませんよね。私もクオリフィッシャー(決済者)とはバックステージで話します。それにもし榊原CEOから握手を求められたら応じます。でも自分からは求めません。ファンから求められたら? 業務に支障が無い範囲で応じます。選手のセコンドと話すことはありません。第三者から見られたときに特定のチームと仲良くしていると見られてしまうからです」
マッカーシーさんがここまで「第三者」に徹していたとは知りませんでした。
ちょっとぐらい大物選手とは仲良くしているものかと思っていました(笑)。
ただ、こういうスタンスだからこそ、すべての選手に、それとファンにも信頼されるのだろうと思いました。
このあたり、「K-1ってどうなんだろう? 」と思ったり(笑)。
「性別や年齢、経験にかかわらず同じレフェリングをするか? 私は変えます。経験の浅いデビュー戦の選手とタイトル戦を戦う選手を同じようにレフェリングはしません。彼らの動きも技術も全く異なるからです。戦う選手との距離、向かい方状況判断も選手によって異なります」
これも「そうだよなぁ」と思いました。
選手の技術レベルやパワーの違いによって、試合を止めるタイミングや危険度も異なるだろうし、ジャッジの見極め方も違ってくるだろうし。
サッカーでも、巧い人は巧妙に反則を誘発するし(笑)。
全ての競技に共通する心構え
一番印象に残ったのは、↓の言葉でした。
「素晴らしいレフェリングはお客さんから印象に残らないことです。“悪い試合”を“いい試合にする”という手出しをレフェリーがしてはいけません。観客の声や視線は気にしない。観客が退屈だと思っている試合をブレイクをかけるなどして面白い試合にしようとはしないでください。レフェリーが試合を面白くすることは一切必要ありません」
「おぉ!なるほど~」と感じました。
たしかに、UFCの好試合でも後味の悪い試合でも、マッカーシーさんの印象ってありません。マッカーシーさんが必要以上にオーバーなアクションをしているところも見たことがありません。
マッカーシーさんがこういうことを意識しているからこそだったんだと、ようやく理解しました。
日本のMMAでは、かつてのPRIDEでもK-1でも「目立とうとしてるんちゃうんか?」と感じられるようなレフェリーがいたし(誰とは言いませんが)、ストップのタイミングを意図的に遅く(or 早く)しているようなレフェリングも見られました。ダウンの判断も超主観的だったり。
「マッカーシーさんの↑のような心構えの人って、いなかったなぁ。今はいるのかなぁ?」
と思います(いればいいですが)。
ただ、これは格闘技に限らず、すべての競技に言えることだと思います。
レフェリー(審判)がいい試合を演出しちゃあいけないし、目立ってはいけないよなと。
MMAやK-1だけでなく、野球とかサッカーには「どうなんだろう?」って思う審判がちょいちょいいるので(苦笑)。
マッカーシーさんは存在感がデカく、場合によってはオクタゴン内にいる3人(選手2人+審判1人)の中で一番強そうに見えることもよくあるけれど(笑)、それでも「マッカーシーさんが印象的だった」という試合はゼロだなぁと感じます。
「審判の鑑」と言える言葉の数々にシビレました。
いつか自分がそんな役回りをする機会があったら、これを思い出そうと思います。