落合博満さんの本『コーチング』。若い頃に読んでおきたかった…
ここ数年、読書をするようになってから、
1.将来自分の役に立つ(立ちそうな)本
2.今の自分に役立つ(立ちそうな)本
3.もっと若いうちに読んでおけばよかった本
の3パターンの本に出会っています。
自分の本の選び方もあり、多くは1か2に属するのですが、たま~に3があります。
先日読んだ落合博満さんの本『コーチング-言葉と信念の魔術』は、
「前職(監査法人)時代に読んでおきたかったなぁ…」
と強く感じた本でした。
刺さる内容のオンパレード
この本は2001年発売なので、まだ落合さんが現役引退後、中日ドラゴンズの監督になる前に書かれたものかと。
現役時代の経験をもとに、「コーチングとは」というテーマで書かれているのですが、まだ監督をしていないはずの落合さんが、今監督時代を振り返って書いているのかと錯覚するような鋭い内容でした。
野球を初めとするスポーツに限ったことでなく、会社や組織における部下への指導の仕方や上司との関わり方、仕事への取組み方等々で
「そうそう!そうだよ!」
「たしかに!」
「だよなぁ…」
「なるほどぉ!」
「そうか!あの時、ああすればよかったんだ!」
と感じる内容が随所にありました。
私の本、赤線だらけ(笑)。
現代社会において上司は教えることに慣れ、部下は教えられることに慣れすぎている。ヒントではなく、やり方や答えばかりを教わるようになっていて、それが自分の色を出せなくなる原因になっている。これは、時代の流れが速くなってきたということにも起因しているかもしれない。
「1+1は?」という式を出せば、「2」という答えはすぐに出せる。では、「2」という答えになる式を作ってみよう。「1+1」だけではなく、「3-1」でもいいし、「1×2」でも「4÷2」でもいい。答えを「2」にできる式は無数にある。何かに取り組み、結果を出そうとする時は、何も問題から答えを出さなければいけないという決まりはない。
(途中略)
指導者は、こうした出発点(式)から答えを出すやり方と、答えから式に戻すやり方、この二通りの方法論を頭に入れておかなければならない。どちらが正しくて、どちらが間違っているということはない。その仕事をしていく人に合うやり方、最もやりやすいと思われる方法を見つけて、その人の持ち味を引き出して伸ばしてやるべきだ。
フォームの全体像を見ながら、ここも悪い、ここも悪い、と部分的な指摘をしていくことは簡単だ。だが、その悪いもの同士がうまく補い合って良い形になっている場合は、悪いとわかっていても直す必要はないだろう。その選手の悪い部分だけを直して良くしようとしても、最終的な形が崩れてしまったらどうしようもない。難しいところだ。
(途中略)
とかく、ダメな部分のほうが目につきやすいので、つい「ダメだ、ダメだ」と言ってしまう。反対に、良い部分はなかなか目につかない。その世界で一流になるためには、いくつかの道があると思う。だが、どの道でも共通していることは、「欠点を矯正するよりも、長所を伸ばすことが近道」という定理ではないだろうか。
物事の考え方や取り組み方には、実際の理由はわからないのに、「そんなことは常識だ」というひと言で片付けられているものが多々ある。「そんなことは常識だ」が口ぐせの人に、「なぜ?」と聞いても、その理由を理路整然と答えられる人はいない。
人の上に立てば立つほど、自分たちが経験した苦い思い出、恥ずかしい記憶は頭の中から消えてしまう。だから、つい「なんだ、そんなこともわからないのか」という言葉が口をついて出る。
その人の特徴は何なのか、見つけ出してやることが肝要だ。教えすぎず、教え込まずに成長を促すか、適性を見極めてふさわしい部署に配属してやること、それが上司の本来の務めだ。
私が見ていて、このやり方では失敗するのではないかと思うのは、各担当コーチに任せられない監督、つまり各部署の責任者に任せられない上司だ。すべて自分でやらなければ気が済まないとか、自分の部下を信頼できない上司はたいがい失敗している。
人間とは面白いもので、自分がいなくなったら、組織や仕事はうまく機能していかないのではないかと思っている。ある意味では、そうした思いが人間を支えているものとも言えるだろう。しかし、実のところ何も変わらないのだ。そのことを寂しいと思うかもしれないが、世の中の仕組みとはそういうものだ。
(途中略)
「自分がいなければ……」と考えている人に限って、自分がそこにいたいのだ。
仕事でどんなにいい結果を残しても、周りのすべての人が納得するかどうかはわからないし、仕事もそこで終わるわけではない。それならば、自分のやった仕事に対して、自分自身で区切りをつける。そして、自分自身に問いかけて「これでいい」と納得できれば次のステップへ進めばいいし、「まだできていない」と感じれば、次のチャンスにできるように準備すればいい。そこで、他人の目など気にする必要はない。
もちろん、アドバイスを受けるのもいいだろう。ただし、質問の仕方は「どうやったらいいですか」ではない。
前職の監査法人時代にインチャージ(現場責任者)や管理職になってから薄ボンヤリと感じていたことや、組織内のあれこれで「この状況、どう考えればいいだろう?」と思案していたことに対するヒントなどがズバズバ書かれていて、目から鱗ボロボロでした。
刺さった内容をザッと上に挙げてみたけれど、まだほんの一部です(苦笑)。
野球ファンなら必読。スポーツが好きなビジネスマンにもおすすめ
落合さんの選手としての実績や、監督としての手腕、解説者としての着眼点の広さ・鋭さ、選手への気遣いなどはTVやYouTubeなどで知っていて、この本を買ってみたのは、ちょっとした興味からでした。
でも、読んでみて、考えの深さとともに、その考えていることを言語化する能力の高さにも驚きました。
見るのが好きなだけで、野球をそんなに詳しく知っているわけでもない私にも分かりやすい文面でした。
落合さんぐらいに考えに考え抜いて野球をしている選手はなかなかいないでしょうし、さらに考えたことを自分の言葉で言語化できる選手となると、落合さんか野村克也さんぐらいしかいないのでは?
(もっといるかもしれないけど)
現役時代に見ていた頃は、「強打者で、すごくサバサバしている選手」というイメージしかなかったですが(失礼ながら)、とんでもない。かっこいい人だと感じました。
2001年発売の本ですけど、今でも同じことが言える内容ばかりだと思っています。
野球のことにも当然触れており、野球ファンなら一読の価値ありだと思います。
また、ビジネス書として、若手/ベテランに関係なくおすすめしたい本だと思いました。
ペーペーのスタッフだった若い頃に読んでいれば、少しだけ人生変わったかもしれないなぁ。
もちろんいい方に。
書いた人
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スポーツを見るのも好きなトレーニングジャンキー。サブ3.5を目指す(あと2分ちょっと…)自称中級市民ランナー。
見る方では、海外サッカー、マラソン、トライアスロン、格闘技全般、NBA、ラグビーが主な守備範囲。テニスもMLBも陸上競技も好き。
公認会計士 税理士
>>>詳しいプロフィール
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