FKの名手とGKの評価…ボールが変わると難しくなる
2018年ワールドカップ公式球「テルスター18」の評判がすこぶる悪いようです。
特にGKに。
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ワールドカップの公式球は、大会ごとにデザインとボールの質(素材、縫製、製法等)が新しくなります。
で、この10年以上は得点数を増やす意図もあってか、ボールが若干軽量化され、変化しやすく・ブレやすくなっています。
これがGKにとって泣かせどころで、前回大会(前々回大会?)の時も大会前に一部GKからブーイングがあったと記憶しており、「今回もそうなのね」という感じです(笑)。
でも、GKが文句を言ったところで何かが変わるわけではなく(苦笑)、大会までにどうにかして慣れるというのが現実的な解決策かと。
他方で、ボールの進化(変質?)は、見る側にとってもちょっと困ることがあります。
GKの世代間評価が難しくなる…
ボールが変化しやすくなる・ブレやすくなるということは、シュートを打つ側にとって有利になり、守る側のGKにとって不利になります。
特にGKにとっては、キャッチできそうなボールでも手許でブレることによってこぼしやすくなることから(こぼせば相手にこぼれ球を狙われる)、キャッチに行かずに敢えてパンチングや強く弾き出す処理をすることが多くなります。
そのため、歴代のGKと現役GKの比較のような世代間比較をするのがますます難しくなります。
ペーター・シュマイケルがバリバリ最強だった90年代は、ボールが今よりも変化しにくかったし、無回転のボールでもそれほどブレていなかったです(と思っています)。
なので、シュマイケルを初めとする当時の名GKは、本当に難しいボールでない限りキャッチしていたことが多かったです。
トーマス・ヌコノやシュマイケルは、ワンハンドキャッチもしていたし…(^^;)
正面に飛んできたボールをパンチすることは、ほとんどなかったはず。
相当エグいコースにシュートを打たれない限り、確実にボールを弾き出せていたはず。
それが今では、直接FKが真正面に飛んできても敢えてパンチングで前に弾き出すGKや、厳しいコースでないシュートでも弾き出せずに決められるGKが増えています。
これはGKの技術的な問題ではなく、ボールが変わっていることが要因なはずです。
でも、それが分からない人たちからすると、
「昔のGKの方がしっかりキャッチしてたんじゃね?」
「そんなに難しいコースじゃないのに、止められなかったのかねぇ?」
となるんじゃないかと。
たま~に自分も一瞬そう思うことがあるので(笑)。
ボールの変質を考慮しないと、「歴代最高」「史上最高」のようなGOAT論は無意味になるんじゃないかと思います。
今後ますますそうなっていくでしょう。
FKの名手が増加する…
ボールが変化しやすくなる・ブレやすくなるということは、シュートを打つ側からすればオイシイことこの上ないです。
特に、FKのスペシャリストと言われる選手が、直接FKで得点する可能性は増えるでしょう。
ブレ球(無回転シュート)の使い手やFKの名手は、10年前、20年前に比べて増えています。
もちろん選手個々の技術的な進化や人並み外れた練習の成果もあるはずで、一概にボールのせいだけにはできません。
ただ他方で、やっぱりボールが変質していることで得点しやすくなっていることも否定してはいけないと思います。
ボールが変わってきていることで、FKの名手の世代間評価も難しくなると思っています。
今でこそブレ球の使い手は多いですが、その選手が90年代以前のボールで同じようにブレ球を蹴れるのか?同じように得点できるのか?と思うことがあります。
過去の名手にしても、例えば
「ジュニーニョ・ペルナンブカーノやシニシャ・ミハイロヴィッチが、現役バリバリの頃に今のボールで蹴っていたらどうなっていたんだろう?」
とか、
「あの有名な1998年のフランスvsブラジルのホベルト・カルロスの弾丸FKは、今のボールだったらどんな変化をしていたんだろう?」
とか。
どうしようもないことだけど、そんなことを想像すると、こっちの方もGOAT論は難しいなぁと思えるのです。
「GOAT」をやめて「現役最高」だけ論じればいいかも
陸上競技やバスケでもシューズの進化があるし、道具の進化・変化はGOATを論じるうえで考慮しなければならない(けど、どうしようもない)ポイントです。
そう考えると、GOATを論争するのはあまり意味がなくなってくるかも…なんて思いました。
それよりも道具に大きな差がない「現役最高」の方がベターかな、と。
まあ、これもいろいろな要素を加味すればするほど難しくなりますが(苦笑)。